『日本的思考の原型―民俗学の視角』高取正男(ちくま学芸文庫)
2021年
224頁
目次(収録作品)
第1章 エゴの本性(個人のシンボル/拒絶の主体)
第2章 裏街道の話(共同体的平衡感覚/間道の実態/道路の二重構造)
第3章 土着との回路(馬の背と牛の背/土着者の姿勢/自然に生きる)
第4章 マレビト論再考(折口説と柳田説/マレビト信仰の根底)
何気なく「そういうものだ」と思っている習俗習慣は、先祖たちの暮らしの蓄積が生んだものだった。われわれの深層心理から、日本の歴史を読みとく。
ふとした時に表れる日本人独特の感覚。自分の湯呑みを他人に使われてしまった時の気まずさなどはその一例といえるだろう。高取によればこの感覚は、自己の範囲を所有するモノや所属する集団にまで広げて認識していた近代以前の名残だという。また祖先としての神、他所から来る神という二種の神観念があるのも、定住だけでなく漂泊もまた少なくなかった前近代の暮らしに由来するという。本書はそうしたわれわれの感覚や習慣を形作ってきたさまざまな事例を挙げ、近代的な自我と無意識下の前近代が交錯する日本人の精神構造を明らかにする。民俗学の傑作にして恰好の入門書。 解説 阿満利麿
アマゾン商品説明より