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『収容所から来た遺書』辺見じゅん(文春文庫)

『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』辺見じゅん(文春文庫)

1992年6月10日初版発行
297頁




著者は、歌人・ノンフィクション作家(女性)。(1939-2011)

山本幡男(やまもと・はたお)というひとりの教養人を主人公にし、書かれたノンフィクション。

届くはずのない遺書が家族のもとに驚きの方法で届けられるという奇蹟の出来事を描く。

山本は、いわゆる「シベリア抑留」により極寒の地での過酷な労働と飢餓に苦しむ境遇となってしまう。
しかし、彼は決して祖国への帰国をあきらめず前向きに日々を送る。

彼は多数の詩歌を暗唱できたり、哲学や仏教などの豊かな知識もあったりする知的な人物で、また人柄も親しみやすく、ユーモアな一面もあったので俘虜仲間に慕われた。

仲間と句会を行うなどして厳しい生活の楽しみとした。
彼らの作った詩・俳句・短歌や手紙なども記され、俘虜生活の様子が描かれる。

残念なことに山本は、帰国を果たせず俘虜9年目に45歳で病で死ぬ。

山本には、妻と子供がいた。

山本の死から2年以上後、敗戦から11年目に日ソ共同宣言が発効され、シベリア抑留者の帰国が実現した。
山本から遺書を託された仲間たちは帰国が叶い、家族に遺書を伝える。


感動的な本。良書。

山本幡男というすばらしい人物がいたことを知ることができ、ありがたい。また、その仲間が果たした約束は、命を懸けた人並外れた行いで、胸をうつ。
日本人として身の引き締まるような書。

シベリア抑留について知りたい人にもおすすめの一書。


第11回(1989年)講談社ノンフィクション賞
第21回(1990年)大宅壮一ノンフィクション賞

なお、解説を吉岡忍なる人物が書いているが不可解である。おかしな見識でへんな事を言っている。

p.296

収容所の外にはスターリンの暴政があり、収容所以前には捕虜たちもその一員であった日本帝国主義のアジアへの侵略があった。それら全部をふくみこめば、ちがった物語になったのではないか、という思いは私にもある。

筆者はこの認識は間違っていると思うが、仮にこの認識が正しいとしても本書の解説としては的外れであり、意味不明である。

[関連]
『収容所から来た遺書』辺見じゅん(1989・文藝春秋)単行本
amazon

[参考]
『戦場から届いた遺書』辺見じゅん(文春文庫)

「遥かなるダモイ」[YouTube]

「奇跡体験!アンビリバボー 終戦記念日特集 シベリアから届いた遺書のナゾ」[YouTube](リンク切れ)

「知ってるつもり?! 妻よ、子供たちよ!奇跡の遺書リレー」[YouTube]

「驚きももの木20世紀スペシャル シベリアの奇跡 「妻よ!」「子供等よ!」収容所から届いた遺書」[YouTube]

「NNNドキュメント’87 男たちの誓い シベリアからの遺書」[YouTube]

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