1999年
265頁
目次(収録作品)
序 心の自然化
I 心身問題
第一章 因果性から見た心と脳
1 強すぎるタイプ的同一性
2 トークン的同一性の魅力
3 非法則性と刹那的なトークン的同一性
第二章 命題的態度と合理性
1 行為の合理的解釈と命題的態度
2 行為の因果説
3 因果説の批判
4 合理性を支える因果的メカニズム
5 日常的な因果概要
第三章 心の実在性
1 命題的態度の構文論的構造
2 脳状態における構文論的構造の欠如
3 全体論的実現
4 命題的態度の実在性
II 志向性
第四章 志向性の自然化
1 志向的状態
2 目的論的機能と志向的内容
3 指示的不透明性
4 内容の不確定性の問題
5 志向的内容をもつための条件
第五章 非法則性と志向的内容
1 個別科学と法則
2 合理性の体系化不可能性
3 非法則性と内容の同一性
第六章 解釈の不確定性
1 意味と発話傾向
2 発話傾向の個人差
3 翻訳の不確定性
4 意味の間主観的同一性
5 信念内容の間主観的同一性
III 意識
第七章 意識の謎
1 知識論法
2 能力説
3 知り方の違い
4 自己完結的な知
第八章 感覚質の志向化
1 志向説
2 知覚と思考
3 言語化可能性
現代の心の哲学は、認知科学や生物学、脳生理学の知見を参照しながら展開されるのが普通である。その方向は、基本的に「物的一元論」の可能性を探るという形になる。哲学の伝統の中には、逆に強固な心身ニ元論があり、私たちの日常のなかにも、心の存在を前提にした方が話が通じやすい領域がある。科学の追究する物的一元論と哲学的常識的なニ元論はどのように調停されるのであろうか。物的な世界のうちに心的なものの適当な居場所を見出すことはできるだろうか。本書はこの課題を心身問題、志向性、意識の三部に分け、英米哲学の先端的な議論を踏まえて解説している。
出典:勁草書房公式サイト