『生き心地の良い町―この自殺率の低さには理由がある』岡檀(講談社)
2013年
226頁
目次(収録作品)
第1章 事のはじまり -海部町にたどり着くまで
第2章 町で見つけた五つの自殺予防因子 -現地調査と分析を重ねて
いろんな人がいてもよい、いろんな人がいた方がよい/人物本位主義をつらぬく/どうせ自分なんて、と考えない/「病」は市に出せ/ゆるやかにつながる
第3章 生き心地良さを求めたらこんな町になった -無理なく長続きさせる秘訣とは
多様性重視がもたらすもの/関心と監視の違い/やり直しのきく生き方/弱音を吐かせるリスク管理術/人間の性と業を知る
第4章 虫の眼から鳥の眼へ -全国を俯瞰し、海部町に戻る
「旧」市区町村にこだわる理由/最良のデータを求めて/指標が無いなら作るまで/
海抜五百メートルの山と高原/地理的特性の直接・間接的影響/海部町の「サロン」活用法
第5章 明日から何ができるか -対策に活かすために
「いいとこ取り」のすすめ/思考停止を回避する/“幸せ”でなくてもいい/危険因子はゼロにならない/人の業を利用する/「野暮ラベル」の効用
徳島県南部の太平洋沿いにある小さな町、海部町(かいふちょう)(現海陽町)。
このありふれた田舎町が、全国でも極めて自殺率の低い「自殺“最”希少地域」であるとは、一見しただけではわかりようがない。この町の一体なにが、これほどまでに自殺の発生を抑えているというのだろう。コミュニティと住民気質に鍵があると直感した著者は、四年間にわたる現地調査とデータ解析、精神医学から「日本むかしばなし」まで多様な領域を駆使しつつ、その謎解きに果敢に取り組む。
ゆるやかにつながる、「病」は市に出せ、“幸せ”でなくてもいい、損得勘定を馬鹿にしない、「野暮ラベル」の活用など、生きづらさを取り除いて共存しようとした先人たちの、時代を超えて守り伝えられてきた人生観と処世術が、次々とあぶり出されていく。出典:講談社BOOK俱楽部