2009年
378頁
定価:4,950円(税込)
論争を通じた発展を特徴とする法哲学において,討議の1つの中心点を30年間以上も占め続けてきた理論家が,ロナルド・ドゥウォーキンである。H・L・A・ハートの法実証主義への根底的批判によって一躍その名を馳せた彼は,その後もロバート・ボークらの原意主義やリチャード・ポズナーの富の最大化論に対して,鋭角的批判と代替理論の提示を重ねてきた。そして,法哲学界の第一人者となったドゥウォーキン自身が,今度は数多くの研究者らによって批判の標的とされ,学問的論議の焦点であり続けている。
このように多角的論争を通じて法哲学・政治哲学の発展に大きく貢献してきた彼が,主要な論敵たちに次々に新たな一撃を加えることで,自説の擁護と深化を図っているのが,本書である。批判的検討の対象には,ハートとポズナーに加えて,アイザイア・バーリン,ジョゼフ・ラズ,ジュールズ・コールマン,キャス・サンスティーン,アントニン・スカリア,リチャード・ローティが含まれる。最終章ではジョン・ロールズを法哲学的に考察する。これらの検討・考察を通じて,法的推論での道徳の位置という中心論題の他,法理論の性格と可能性,諸価値の相互関係,憲法解釈の方法などの重要論点が鮮やかに解明されている。出典:木鐸社公式サイト
目次(収録作品)
日本語版への序文
序論 法と道徳
ありうる交差の短い目録
ソレンソンの事案
意味論的段階
法理学的段階
学理的段階
裁決的段階
法的プラグマティズム
道徳的多元論
政治的な学理的実証主義
分析的な学理的実証主義
法哲学
最後の提案
第1章 プラグマティズムと法
新プラグマティズム
正解の寄せ集め
フィッシュと実践の微妙さ
第2章 理論をたたえて
序論
埋め込み的見解
ヘラクレスとミネルウァ
シカゴ学派
要約:理論を擁護して
第3章 ダーウィンの新手の勇猛な飼い犬
切迫した問い
道徳の独立性
「道徳理論」とは何か
「強い」テーゼ
「弱い」テーゼ
新プラグマティズム
補論:プラグマティズムとブッシュ対ゴア事件
第4章 道徳的多元論
第5章 原意主義と忠誠
第6章 ハートの補遺と政治哲学の要点
アルキメデス主義
政治的概念
法
リーガリティという価値
第7章 30年間も続いて
序論
ピックウィック流の風変わりな実証主義
プトレマイオス流の天動説的実証主義
実証主義と偏狭心
補論:個人的特権で述べたい論点
第8章 法の諸概念
意味論の毒牙
ドゥウォーキンの誤謬
法の諸概念についてのラズの見解
学理的概念と分類学的法概念
第9章 ロールズと法
法哲学者としてのロールズ
法哲学の本性
法とは何か
法的推論への制約
立憲主義
真理と客観性
告白