2018年5月29日第1版第1刷発行
247頁
定価:968円(税込)
目次(収録作品)
第1章 「情の力」の神髄――日本人と西洋人の考え方は何が違うのか
第2章 「情」の戦略――「知・論理」に頼らぬ日本的あり方
第3章 「情」の組織論――情でつながった関係性ほど強いものはない
第4章 「ヒュージネス」に立ち向かう日本精神――闘いに必要な気概と情
第5章 近代が終わり「情」が復活する――なぜ日本は世界に稀なる「いい国」か
著者は、評論家、元・日本長期信用銀行取締役ほか。
「理」ではなく「情」が重要であることを著者のエピソードや歴史の事例などの蘊蓄をまじえて論じたもの。
評価が分かれる本だろう。筆者は著者の主張にはおおむね賛同するが、具体的に「情」でどうやって主導権をとるのか、「理」中心の人々にどうやってそれを広めるのかが示されていない点。また、著者のいう「情」というものが曖昧で、言葉では言えないと逃げる部分がある点が気になった。社会は禅ではないので、言葉では言えなくとも、それをどうにか相手に言葉で伝えなくてはならない。それに関連して著者もしっかり指摘していはいる(例えば、p.197-p.198)が、全体的に情を強調するあまり「理」を過小評価し過ぎている感がある。むしろ、我が国にはまだ、ちゃんとした「理」―賢しらな理ではなく―が足りないのではないかと思うところが筆者にはあるが。
興味深いエピソードが散見されるので一読してもよい本。
[筆者注]
(p.154)「彼は学燈を継いだ」。
おそらく「学統」の間違い。