『数の発明―私たちは数をつくり、数につくられた』ケイレブ・エヴェレット、屋代通子訳(みすず書房)
2021年
336頁
目次(収録作品)
序 人間という種の成功
第一部 人間の営為のあらゆる側面に浸透している数というもの
1 現在に織り込まれている数
2 過去に彫りこまれている数
3 数をめぐる旅──今日の世界
4 数の言葉の外側──数を表す言い回しのいろいろ
第二部 数のない世界
5 数字を持たない人々
6 幼い子どもにとっての数量
7 動物の頭にある数量
第三部 わたしたちの暮らしを形作る数
8 数の発明と算術
9 数と文化──暮らしと象徴
10 変化の道具
“なぜ人類だけが、どこまでも数を数えられるのか。それは、ヒトが生得的に数の感覚を持っているからだ”――数は、私たちの思考に深く根付いている。だからこの説明は、一見するともっともらしい。
しかし、アマゾンには数を持たない人々が暮らしている。幼少期、宣教師の父とともにこのピダハン族と暮らし、人類学者となった著者によれば、数は車輪や電球と同じ「発明品」であるという。
「数の感覚」がまったく存在しないというわけではない。ピダハン族や乳児の調査によれば、彼らは数についてごく限られた感覚を持つ。人類は長い間、この曖昧な感覚だけで生きてきたのだ。
そして私たちも、幼い頃は数のない世界を見ていた。今、数がわかるのは、かつて発明された数体系を受け継いだからこそである。各地の言語には、身体やさまざまな物を足がかりに発明が起きた跡が残されている。そしてピダハン族のように、発明が起こらなかった例も存在する。
「わかったのは、ピダハンについてではなく、人類すべてに関することだ」。考古学、言語学、認知科学、生物学、神経科学に散らばる手がかりを横断し、数の発明の経緯を探り、その影響を展望する書。出典:みすず書房公式サイト