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『決定版 国民の歴史』西尾幹二(文春文庫)

『決定版 国民の歴史』(上下)西尾幹二(文春文庫)

上巻

2009年10月10日第1刷発行
496頁
定価:924円(税込)

目次(収録作品)

まえがき 歴史とは何か
1 一文明圏としての日本列島
2 時代区分について
3 世界最古の縄文土器文明
4 稲作文化を担ったのは弥生人ではない
5 日本語確立への苦闘
6 神話と歴史
7 魏志倭人伝は歴史資料に値しない
8 王権の根拠―日本の天皇と中国の皇帝
9 漢の時代におこっていた明治維新
10 奈良の都は長安に似ていなかった
11 平安京の落日と中世ヨーロッパ
12 中国から離れるタイミングのよさ―遣唐使廃止
13 縄文火焔土器、運慶、葛飾北斎
14「世界史」はモンゴル帝国から始まった

下巻

2009年10月10日第1刷発行
553頁
定価:1,067円(税込)

15 西欧の野望・地球分割計画
16 秀吉はなぜ朝鮮に出兵したのか
17 GODを「神」と訳した間違い
18 鎖国は本当にあったのか
19 優越していた東アジアとアヘン戦争
20 トルデシリャス条約、万国公法、国際連盟、ニュルンベルク裁判
21 西洋の革命より革命的であった明治維新
22 教育立国の背景
23 朝鮮はなぜ眠りつづけたのか
24 アメリカが先に日本を仮想敵国にした(その一)
25 アメリカが先に日本を仮想敵国にした(その二)
26 日本の戦争の孤独さ
27 終戦の日
28 日本が敗れたのは「戦後の戦争」である
29 大正教養主義と戦後進歩主義
30 冷戦の推移におどらされた自民党政治
31 現代日本における学問の危機
32 私はいま日韓問題をどう考えているか
33 ホロコーストと戦争犯罪
34 人は自由に耐えられるか
原書あとがき
下巻付論 『国民の歴史』という本の歴史
参考文献一覧

著者はドイツ文学者、評論家。

本書は、「日本から見た世界史の中にきちんと日本を位置づける通史」(p.500)を意図して書かれた本。
縄文文明から近現代までわが国の歴史を上述の構想でさまざまに論じている。

文章は明快だが、前提の知識がいる部分が散見されその意味で結構むずかしい本だろう。
鋭い指摘や考えるヒントもある中々の良書。

[]は引用者。

(下巻 p.127)
万国公法は最初、天地の行動といった儒教的自然法と結びつけて世界を理解する道義の道として意識されたが、これはなかなか示唆的である。道義の道として理解されたのあって、エゴイズムの相互調節の機能として理解されたのではない。出発点にすでに誤解がある。

(下巻 p.161)
なぜ、フランス革命がこれほどまでモデルとされたか(略)
彼らマルクス主義者たちが、フランス革命を最も典型的なブルジョア革命として完成品扱いしたがったのは、次の段階としてプロレタリア革命を予想し、というより、確信し、歴史が必然の法則にしたがって動いていくことを理論化したいがためであった。(略)プロレタリア革命に先行して、まずブルジョア革命が起きていなければ、歴史の必然的法則にしたがって動いていないことになり、理論にそぐわない、と考えられたからであろう。なんというばかばかしいイドラ(偶像)が日本の学問を支配していたことであろう。

(下巻 p.212)
いいか悪いかという話ではない。今、世界各国はなんの疑問もなしに経済力を競い合っているが、それと同じように、なんの疑問もなしに武器に手を出し、支配圏の拡大を競い合った時代があったのである。その折の「世界政治熱」は今からはたしかに「了解不可能」ではあるけれども、それを歴史上の一現実として認めなければ、歴史は叙述できない。

(下巻 p.441)
[日本人の]人の良さというか、外交的気質の欠如というか、あるいは異民族との接触の度合いの少ないナイーブさというか、もちろんなんと呼んでもよいが、私はそのことがたまらなく恥ずかしい。彼ら西洋人の冷酷無比な、しかも合理的な、それでいて異民族に恩恵を与えているとでもいうようなスタイルをとり、さらに文明のオブラートでじょうずに包み隠して、あたかも上位文明を与えてやっているんだから、かかる措置は当然であると言わんばかりの対応をして、利益を収奪しながら恬として恥じないスタイルを少しは見習ったらどうか。


[関連]
『国民の歴史』西尾幹二(1999・産経新聞ニュースサービス)単行本
amazon

『国民の歴史』(西尾幹二全集18)(国書刊行会)

[筆者注]
(p.153)「新規巻き直し」。「蒔き直し」の間違い。

(p.159)「三菱、安田、大倉、渋沢」
(三菱、安田は財閥。大倉は、大倉喜八郎か。渋沢は、渋沢栄一)

(p.160ほか)「大塚史学」
(経済史学者の大塚久雄)

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