1987年11月10日第1刷発行
347頁
目次(収録作品)
一 庶民のねがい
二 貧しき人びと
王朝の庶民
嫁の座
私有財産
人口問題
出稼ぎ
三 変わりゆく村
土地所有意識
伊勢参り
言語生活
村の民主化
四 山村に生きる
山の生活
米良紀行
芸北紀行
五 村里の教育
郡生活の場
伝承の位置
シツケとあそび
一人まえの完成
文字の教育
六 民話と伝承者
生活規範としての民話
農民の発見を
民話を保持する世界
伝承者の系譜
七 底辺の神々
憑きもの覚え書
残酷な芸術
解説 田村善次郎
著者は、民俗学者・農村指導者。(1907-1981)
本書は、自身も農民であった著者が、その体験も踏まえ庶民の暮らしについて書いたエッセー(随筆)。
石工や漁師のエピソード、農民の重労働、オシラサマの話などが興味深い。
なお、本書は同一書名の未来社刊の文庫版だが、底本にある「私のふるさと」は収録されていない。それは、『家郷の訓』に収録されている。
著者の教師時代のよいエピソードを引用する。
(p.13~)
昭和十九年、私は(略)奈良県の田舎の中学校につとめることになった。生徒たちが敗戦の日に失望しないように、戦争の状況についてよくはなし、また戦場における陰惨な姿について毎時間はなしてきかせた。(略)
「私たちは負けても決して卑下してはいけない。われわれがこの戦争に直面して自らの誠実をつくしたというほこりをもってほしい。それは勝敗をこえたものである。そしてまだ私たちはこのきびしい現実を回避することなく、真正面から見つめ、われわれにあたえられた問題をとくために力いっぱいであってほしい。そういう者のみが負けた日にも失望することなく、新しい明日へ向かってあるいてゆけるであろう」
[関連]
『庶民の発見』宮本常一(1961・未来社)
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