『皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則』ロジャー・ペンローズ、林一訳(みすず書房)
1994年
536頁
目次(収録作品)
1 コンピュータは心をもちうるか?
2 アルゴリズムとテューリング機械
3 数学と実在
4 真価、証明と洞察
5 古典的世界
6 量子マジックと量子ミステリー
7 宇宙論と時間の矢
8 量子重力を求めて
9 実際の脳とモデル脳
10 心の物理学はどこにあるのか?
コンピュータ科学の研究に携わる多くの数学者たちは、人工知能(AI)を備えたコンピュータ――人間の心における思考プロセスと同等の、あるいはそれを凌駕する能力をもつ機械――が可能となる日は近いと考えている。
オクスフォード大学の数学教授であるロジャー・ペンローズの見解は異なっている。彼によれば、人間の心の動きは――そして、猿やイルカの心でさえ――、すでに存在するいかなるコンピュータともまったく異なっている。知的な読者のために書かれた、このすばらしく面白い――ときに、きわめて論争的な――大作『皇帝の新しい心』で、著者ペンローズは、現在の物理学にはきわめて重要な基本的洞察――量子重力論――が欠けており、それが得られない限りは、心を理解することは決してできない、と主張する。しかも著者によれば、この基本的洞察こそは、物理学の究極的な統一理論をもたらすためにも必要とされるものなのだ。
これは破天荒な主張だ。《AIは裸の王様だ》と喝破するこの主張を読んで、読者の中には憤慨する人もいるだろう。だが、そう唱えるのは、他でもない。数学、物理学、宇宙論において輝かしい業績を挙げた鬼才ペンローズだ。スティーヴン・ホーキングと共同で行なったペンローズの研究は、ブラックホールの存在を明らかにし、宇宙のビッグバンによって始まったことを解明した。ペンローズが語るとき、科学者たちは耳を傾けるのである。出典:みすず書房公式サイト