『遠近の回想 増補新版』クロード・レヴィ=ストロース、ディディエ・エリボン、竹内信夫訳(みすず書房)
増補新版2008年
384頁
目次(収録作品)
プロローグ
第一部 ドン・キホーテの帰還
1 オッフェンバックからマルクスへ
2 フィールドに立つ民族学者
3 ニューヨークの放浪生活
4 旧世界への帰還
5 数字8の秘密
6 パリの構造主義
7 コレージュ・ド・フランスにて
8 緑の礼服——アカデミー・フランセーズ
9 「退屈することはありません」
第二部 精神の法則
10 結婚の掟
11 感覚的世界
12 スー族、哲学者、科学
13 歴史の掃き溜めのなかで
14 鳥の卵採りの後を追って
15 思考の働き
第三部 複数の文化、単一の文化
16 人種と政治
17 文学
18 絵画の内容
19 音楽と声
エピローグ
二年後に
20世紀という時代を深く生き抜いた思想家レヴィ=ストロースは、自分について語ることが少なかった。旧版では、文化人類学者としての生涯と精神の軌跡とを、45歳年下の鋭敏な聞き手を得て、のびのびと楽しく語っている。今回の増補新版は、その2年後に、旧版への反応を踏まえて行なわれた対談「二年後に」を併せて収める。
話題は多岐にわたり、まず生涯の節目となった出来事を克明に語る。ブラジル滞在、亡命先のニューヨークで出会ったブルトンやエルンスト、パリでのラカンやメルロ=ポンティとの交流、1968年のパリ五月事件への反応、自らの構造主義的思考に決定的な影響をあたえたヤーコブソンの存在…。
著書の1冊1冊について意図や背景を述懐する部分では、〈自然から文化への移行〉という壮大なテーマを生涯追求し、各々がその変奏曲であったことが浮彫りにされる。
さらに、ワーグナーやコンラッドへの思い入れ、劇作家になりたかった夢など、その人間的魅力がふんだんに引き出され、発見も詰まっている。彼自身による最適なレヴィ=ストロース入門ともいえよう。出典:みすず書房公式サイト