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『日本人―その生活と文化の心理』高木正孝(河出新書)

『日本人―その生活と文化の心理』高木正孝(河出新書)

1955年11月15日第1刷発行
198頁




著者は、登山家・心理学者。(1913-1962)

本書は、いわゆる日本人論。敗戦まもない1948年(昭和23)の日本人を観察したスイス生まれの女性(ガスカール夫人)のエッセー風の記録に著者(高木)が解説をする構成。

これは「論」とはいえない内容。ガスカールの指摘の多くは、当時の日本人のマナーの悪さに対する愚痴である。
道端で立小便をする、トイレが不潔、電車の乗降で、われ先に乗り降りしようとする、電車などで靴下を脱ぐ、夏などに人に見えるところで上半身裸でいる、人前で爪楊枝をつかう等々の彼女が不愉快に思った日本人のマナーの悪さをあげつらっている。副題にある「その生活と文化の心理」の考察はほぼない。
また、不潔さなどは別にしても、受け取り方や表現の仕方等は、それぞれの文化により異なるのに、その点をわきまえていないのもよくない。それから、教育を受けた平均以上の欧米人と当時の女中を比較して論じているのも間違っている。

高木の主張は、要約すれば諸悪の根源は日本の「家族制度」であるというもの。
(p.70)〔男女七歳にして席を同じゅうせず、社会には全く、異性同士が交際する場所と時間は与えられず、女性は、一般「男性」より目下の、劣等な「女集団」として、「男集団」から区別され、「女」は、子供を生み、女中の代りをする「動物」としか認められ〕ない日本の家族制度。

(p.167)〔「恥の文化」天皇制的家族制度を支配体制とする限り、この猿真似様式はなくならないでしょう。〕

(p.196)〔(略)日本の封建的な「家族制度」の数々の特性が、西洋よりおくれた、未開の、人間性さえもたない悪いものであることは、今、私達が西洋と比べてみて、はっきり知っているところです。〕

三ヶ所引用したが、この調子でこのほかの箇所でも繰り返し「家族制度」を批判している。

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