『ソロモンの指環―動物行動学入門』コンラート・ローレンツ、日高敏隆訳(ハヤカワ文庫)
1998年
261頁
孵卵器のなかでハイイロガンのヒナが卵から孵った。小さな綿毛のかたまりのような彼女は大きな黒い目で、見守る私を見つめ返した。私がちょっと動いてしゃべったとたん、ガンのヒナは私にあいさつした。こうして彼女の最初のあいさつを「解発」してしまったばかりに、私はこのヒナに母親として認知され、彼女を育てあげるという、途方もない義務を背負わされたのだが、それはなんと素晴らしく、愉しい義務だったことか……「刷り込み」理論を提唱し、動物行動学をうちたてた功績でノーベル賞を受賞したローレンツ博士が、溢れんばかりの歓びと共感をもって、研究・観察の対象にして愛すべき友である動物たちの生態を描く。
著者の愛すべき人柄のしのばれる「第二版へのまえがき」を初収録。
出典:ハヤカワ・オンライン
原題『Er redete mit dem Vieh,den Vog』
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