2007年2月26日初版発行
269頁
著者は、映像メディア工学が専門の研究者。
全4章の構成で、第1章がタイトル通りの内容。第2章は大学で「自然科学概論」なんて講座名で講義されるような内容。分かっている人には退屈。第3章は「学歴エリート」の問題点を論じ、第4章は、「学者のウソ」を防ぐために「言論責任保証」などを提案している。
情報リテラシーを学ぶ本として、一読しても悪くはない。
薬害エイズ事件について指摘しているところ(p.199)は、評価する。マスコミのせいで安部英を極悪人だと思っている人は、今も多いだろう。
気になった所。
(p.116~)
何でも仮説だということになれば、万有引力の法則も仮説に過ぎないのだから、ビルの屋上から飛び降りても構わないという論理も否定できなくなる。
意味が分からない。別に「ビルの屋上から飛び降りても構わないという論理も否定できなく」ならない。著者は、「仮説」という言葉をなにか違う意味で使っているのか?
(p.226~)
たとえば、リーダーは結果責任を問われるべきとの価値は、現代社会では広く共有されている価値観の一つである。(略)企業のリーダーであれば、(略)経営に失敗すればその責任は厳しく問われる。これを基準に考えれば、先の大戦によって、日本全土が焦土と化し、数多の日本人が筆舌に尽くしがたい苦痛を受けたという重い結果に対し、A級戦犯の責任を厳しく問わない姿勢は、現代社会で共有されている価値と明らかに矛盾する。
言いたいことは分からなくもないが、「A級戦犯」というのは不適当である。著者は、東京裁判が滅茶苦茶なものだったことを知らないようだ。つまり、A級戦犯=先の大戦の責任者ではない。(もちろん、重複はあるかもしれないが)。また、この文脈で論ずるならリーダーは昭和天皇のはずで、その点でもこの部分で言っていることは、おかしい。(筆者は昭和天皇に責任があるとかないとか言いたいのではなく、この論述がおかしいと指摘している。念のため)