『君、國を捨つるなかれ―『坂の上の雲』の時代に学ぶ』渡辺利夫(海竜社)
2010年10月22日第1刷発行
270頁
目次(収録作品)
第1部 『坂の上の雲』と現代
第2部 [対談]明治のリアリズムと「公」の精神
第1章 甦る日露戦争の時代 松本健一
第2章 明治人のリアルな国際感覚を再生せよ 関川夏央
第3章 「私」を超えられない日本人の器 金美齢
第3部 海洋国家連携を堅持せよ
著者は、経済学者。
本書は論説と対談をまとめたもの。
第1部は、日清戦争、日露戦争について論じる。日英同盟、福沢諭吉、陸奥宗光、柴五郎、後藤新平など。
第2部は、対談。
第3部は、主に東アジアの経済について論じている。
全体的にはまあまあ。第1部は、なかなかよい。
重要な指摘を引用しておく。
(p.181)
とかく世間では、そういう個人と個人の付き合いを友好的なものにし、理解し合い、尊敬し合えば、つまり、個人、市民、地域の多層的なレベルで交流し合えば、国と国との関係もよくなるという考えが多いのですが、私はちがうと思います。個人はどこまでも親しくなりうるけれども、民族とか国家という単位になったら、エゴイズム丸出しでぶつかり合う関係になる。個人はまったく関係ない。(略)個人の関係を民族、国家の関係に置き換えることはできないという「背理」を、私は中国人も含めて学生にもよく話します。
筆者も全く賛同する。「民族、国家」に宗教も加えられる。