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『日本は「神の国」ではないのですか』加地伸行編著(小学館文庫)

『日本は「神の国」ではないのですか』加地伸行編著(小学館文庫)

2000年8月1日初版第1刷発行
286頁
定価:523円(税込)




目次(収録作品)

第1部 『「神の国」発言』事件

第2部 「神の国」と日本人
第1章 日本は「神の国」である 加地伸行
第2章 日本人の古来から持つ宗教観の再認識のきっかけに 佐伯彰一
第3章「神の国」発言に耳を傾けよ 長谷川三千子
第4章 いまこそ21世紀へ日本のアイデンティティを探る好機だ ペマ・ギャルポ
第5章 時代の“気分”を表現した首相の発言 山口昌男

第3部 「神の国」と日本
第1章 日本は天皇を中心とした神の国である。これに異議を唱える根拠はどこにもない 大原康男
第2章「神の国」と「憲法」 坂本多加雄
第3章「日本は日本」と主張できる健全な愛国心の育成が急務である 中西輝政
第4章 日本国憲法と象徴天皇制 西修
第5章 国民主義をはきちがえた「民の国」の人々へ 西部邁

2000年に森喜朗首相(当時)が祝賀会の挨拶のなかで、日本は天皇を中心とした神の国であると言ったことに対して多くのマスコミが批判した。本書はこの出来事に対しての論説集。

坂本多加雄と西修の論は有益で読む価値がある。長谷川三千子の論はまずい。後述する。
第1部は、「神の国発言」全文、森首相の釈明会見、新聞や野党の批判を収録している。よって、ジャーナリズムを研究する人には、本書は有用かもしれない。

長谷川は論で「八紘一宇」を説明している。

(p.150)
つまり本来は、もともと日本国内における政治道徳の基本である「蒼生安寧」の理想を、さらに広く周辺異民族の間にも広めてみよう。そして全世界が一つの家族としてむつみ合うようにしよう、というのが「八紘一宇」という考えだったわけなのです。

(p.152)
すなわち、日本はその本来の「八紘一宇」の理念にもとづく平和な国際社会を築こうと志しているのに、現実西洋諸国が作り上げている「国際社会(インターナショナル)」は、力と力のぶつかり合いを基本原理とする野蛮な世界である。その野蛮な世界秩序に挑戦し、徳治を基本とする「世界新秩序」をうちたてよう――これが大東亜戦争における日本の戦争理念だったわけです。


長谷川は、「八紘一宇」という造語の元には触れていない。すなわち、それは『古事記』の「六合(くにのうち)を兼ねて以て都を開き、八紘(あめのした)を掩(おお)いて宇(いえ)と為むこと、亦可(よ)からずや。夫の畝傍山の東南橿原の地を観れば、蓋し、国の墺区(もなか)か。治(みやこつく)るべし。」(神武天皇の神勅)である。これを読めば分かるように、これは日本のことを言っている。外国については全く言っていない。長谷川は、「全世界」とか「世界新秩序」などと述べているが、本来的に「八紘一宇」は日本に対しての言である。
また、百歩譲っても彼の戦争は「大東亜戦争」「東亜新秩序」「大東亜共栄圏」であり、全世界ではなく、東アジアが対象である。

三国同盟の議が進められたときから其の締結に至る迄之に依て世界を分割するとか、世界を制覇するとか云うことは夢にも考えられて居りませんでした。唯、「持てる国」の制覇に対抗し此の世界情勢に処して我国が生きて行く為の防衛的手段として此の同盟を考えました。大東亜の新秩序と云うのも之は関係国の共存共栄、自主独立の基礎の上に立つものでありまして、其後の我国と東亜各国との条約に於ても何れも領土及主権の尊重を規定して居ります。又、条約に言う指導的地位というのは先達者又は案内者又は「イニシアチーブ」を持つ者という意味でありまして、他国を隷属関係に置くと云う意味ではありません。之は近衛総理大臣始め私共閣僚等の持って居った解釈であります。
(東條英機宣誓供述書)


[筆者注]
本書、誤字が多い。特に気になったものを記す。

(p.46)「新党の精神」。神道。
(p.121)「異教徒との争いが、そして時に宗教戦行」。「戦争」の誤記か。

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