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『洟をたらした神』吉野せい(中公文庫)

『洟をたらした神』吉野せい(中公文庫)

2012年
233頁




目次(収録作品)

春/かなしいやつ/洟をたらした神/梨花/ダムのかげ/赭い畑/公定価格/いもどろぼう/麦と松のツリーと/鉛の旅/水石山/夢/凍ばれる/信といえるなら/老いて/私は百姓女

本書は、詩人の三野混沌(本名=吉野義也)夫人の随筆集。
福島県での過酷な開墾生活をつづる。
夏目漱石が長塚節の『土』を「余の娘が年頃になって、音楽会がどうだの、帝国座がどうだのと云い募る時分になったら、余は是非此「土」を読ましたいと思って居る。」と評したが、本書もそれに相応しいものだろう。

巧みな描写と読みにくい文章とが同居している癖のある独特の文体。
詩人・猪狩満直を回想した「かなしいやつ」、「麦と松のツリーと」の白人の青年俘虜とのエピソードがよい。
なかなかおすすめ。

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