1992年
206頁
著者は、1929年(昭和4)生まれの女性。
本書は、TBSでドキュメンタリー番組制作などの仕事をし定年退職した著者が、「現代社会」から失われつつある重要なものが、雑貨屋にあるのではないかと感じ、それを取材して書いたエッセー。
取材時、著者はおそらく56、7歳。
東京・東中野の「家庭用金物・荒物百貨の店、河野金物店」、神奈川県小田原の「志澤誠太郎商店」、東京足立区のわらじ問屋「沢甚商店」を取材している。
それぞれの店、人の歴史が語られ、なかなかよい。ただ、著者の現代から失われつつあるものへの考察は、表面的、一面的で鋭くない。近代化、合理化等々を単に悪者とみなし、それらによって消えつつあるものを判官贔屓的に捉えているだけである。