1999年8月4日第1版第1刷
222頁
定価:722円(税込)
目次(収録作品)
プロローグ
第1章 「言いにくさ」の由来
第2章 「弱者」聖化のからくり
第3章 「弱者」聖化を超克するには
第4章 ボクもワタシも「弱者」
著者は、評論家。(1947-2023)
本書は、「弱者」「差別」について、出生前診断、乙武洋匡著『五体不満足』、部落差別、メディアの自主規制などを俎上にあげ論じたもの。
論旨に賛同する所も散見されるが、全体的にいま一つ鋭くない。タブー的な話題から逃げずに評論している態度は立派。
部落問題について論じた所は、基礎的な部分を丁寧に説明していなく、恐らく多くの人には分かり難いだろう。具体的には下記の部分など。
(p.98)〔現代社会[では]被差別者とか弱者として特定されるべき集団的な「しるし」を持たない(中略)現実的な指標として残されているものは、唯一「居住地域」だけ〕
これは前時代では「部落」の共同体が存在していたのだが、現今ではその共同体は(ほとんど)なくなっているのに、居住地が、実質を伴わないでその「しるし」になっているということを指摘している。。
例えば、以前に「部落」だった地域に引っ越したら、「部落」とは全く関係ないのに部落民(被差別者)と言えてしまう。
[筆者注]
(p.29)〔[著者が]ある新聞のコラムを担当していたときに、「肉屋」という表現は困ると言われ(…)びっくりした(…)要するに、部落問題に関連した職業差別を連想させるからなのだろうが(…)〕
これは、部落差別とは関係なく新聞やテレビが「〇〇屋」という言い方が、見下した言い方だと受け取られかねない(実際そう受け取る人はまずいないが)と自主規制しているだけ。八百屋・魚屋・床屋・郵便屋なども自主規制している。(本書でも165ページで言及しているのだが)