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『国語教科書の思想』石原千秋(ちくま新書)

『国語教科書の思想』石原千秋(ちくま新書)

2005年10月10日第1刷発行
206頁
定価:792円(税込)




目次(収録作品)

第1章 「読解力低下問題」とは何か
(国語教育をめぐる「誤解」/「読解力低下」の一人歩き/PISAの「読解力」試験とはどういうものか/新しい科目の立ち上げ)

第2章 自己はどのように作られるのか―小学国語
(自然に帰ろう/父の不在の意味/自己と他者に出会う/他者のいない情報/二つの定番教材)

第3章 伝える「私」はどこにあるのか―中学国語
(強いられるコミュニケーション/「道徳」の方へ/「わたしたち」というレトリック/なんのための豊かさか)

著者は、国文学者。日本近代文学が専門。

第1章は、いわゆる「PISAショック」について主に論じている。OECDが行う国際的な学習到達度調査(PISA)で、2003年に日本の順位が大きく下がった。「ゆとり教育」が、その原因だという批判が多くなされたが、著者はそれは的外れだと指摘する。PISAの「読解力」の設問は、情報を読み取る問題だけでなく、「批評」(自分なりの考え)を求める問題も多く、日本の生徒は、それらの問題が不得意であることを具体的に分析し論じている。

第2・3章は、教科書が採りあげている、また、採りあげていない事柄や「思想」を論じる。

国語の教科書には「他者」が見えないという指摘は、正鵠を射ている。そして、それは「批評力」の弱さにつながっていると筆者は思う。著者も指摘するように、(仲間としての他者ではなく)いわば公の「他者」の視点を養うことは非常に重要な点である。

国語教育に関心がある人には、なかなか興味深い本。

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