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『洞窟オジさん』加村一馬(小学館文庫)

『洞窟オジさん』加村一馬(小学館文庫)

2015年9月13日初版発行
301頁




昭和35年(1960)、当時13歳だった加村一馬は、両親の虐待からのがれるため決意の家出をした。足尾鉱山の洞窟や栃木・新潟・福島などの山をひとりっきりで転々とし、野生の動物を捕獲して暮らした男の体験記。

実際は、ずっと洞窟で暮らしていたわけではないし、洞窟生活をしていた時は、少年なので正しくはないが、タイトルが秀逸。「洞窟生活をしていたことがあるオジさん」である。

下手な小説よりずっと面白いノンフィクション。加村のシンプルな語りが、すいすい読ませる。
ノンフィクションとしては、虐待や建築現場で働いていた時の人間不信になった出来事(p.211)などをもっと突っ込むべきだが、加村の心の傷に配慮してか、語られていないのはすこし残念。
おすすめの一書。

巻末に加村とリリー・フランキーの対談を収める。

本書は、『洞窟オジさん』(2004・小学館)に大幅に加筆し、改稿し、文庫化したもの。

本作はNHKでドラマ化されているが、原作を当り障りなくまとめたありがちなものではなく、力のこもった作りでよい。おすすめ。

気になった点。

サイトなどの本書の内容紹介だと43年間山にいたような印象を受けるがそうではない。
13歳で家出。洞窟で4、5年暮らしたのち、十数年(?)関東あたりの各地の山を渡り歩く。山から下り、その後はおもに川べりでホームレスのように十数年暮らす、という感じ。
それから、単行本の副題の「荒野の43年」というのは、何なのか? 加村さんがいつ「荒野」で生活したのか。

(こまかい事だが)本書をもとにしたドラマでリリー・フランキーが加村の「青年期」を演じたとなっている(p.282)が、「中年時代」の間違い。ちなみに、少年時代は富田海人、青年時代は中村蒼が演じている。
(また、NHKのサイトが「加山一馬」と名前を間違えている。おそらく、これが原因でほかにも「加山」と間違っている情報がある)

「解説」(吉田照幸)で、
「青木ヶ原樹海の樹海でさまよい、汚い死体を見ることで自殺をやめる。普通だったらその前にあったトラック運転手の説得でやめるのが関の山です。なのに、死体が汚いからやめる。(略)死を考えた人間が、汚いからやめる。」(p.297)
と「汚い」を連呼しているが、加村は死体が汚いとは、少なくとも本書では言っていない(該当箇所p.101~)。こういう誤読か勝手な解釈は不快である。もし誤読等なら、彼に解説を書く資格はない。
(「少なくとも」と断るのは、吉田は加村に会って話しているので、その中で加村がそういっていた可能性があるため。たぶん、言ってないと思うが。(もしそうならそう断るべきであるし))

[関連]
『洞窟オジさん―荒野の43年 平成最強のホームレス驚愕の全サバイバルを語る』加村一馬(2004・小学館)単行本・221頁
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「洞窟おじさん 完全版」(ドラマ)
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