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『日本語 表と裏』森本哲郎(新潮文庫)

『日本語 表と裏』森本哲郎(新潮文庫)

1988年3月25日初版発行
221頁




著者は、元新聞記者の評論家。(1925-2014)

本書は、「よろしく」「やっぱり」「虫がいい」「どうせ」等々の日本語をとりあげて日本・日本人論を語ったエッセー。
端的に言って詭弁の本。論述が印象論、後講釈的、恣意的、本末転倒等々で、なってない。文章は、平易かつ明快なので、あざむかれてしまう人も多いのでは、と想像する。
詳しくは批判しないが、目についたものを挙げておく。
「よろしく」というのは、責任を相手に転嫁するもの。(p.21)
(「文脈的に」そういうケースがあるだけで、「よろしく」が責任転嫁というのはおかしい。)

中国語では大半は九割、多半が七割、一半が五割、小半が四割と決まっている。(p.24)
(中国人の知人に聞いた話だそうだが、これは本当か。すくなくとも、中国語の辞書には書いてないが。)

日本は同調圧力が強い。(p.30)
(印象論ですね。こういうのはデータで示さないと信用できない。おおくの外国も同調圧力強いですよ。参考『「集団主義」という錯覚』

日本の社会は世界の中でもとりわけ騒がしい社会なのである。(p.73)
(そんなことはないだろう。総じてみれば、日本は静かである。祭、スポーツの観戦、音楽のライブ等でも欧米や他のアジアの国の人びとの方が「騒がしい」。)

日本人は、抽象的な思考が極めて不得手。(p.114)
(どこと、どの階層と比べて言っているのか。江戸時代に庶民に数学がひろまっていた一例だけみても、日本人が殊更抽象的な思考が苦手だということはない。)

他にもおかしな論の展開、分析が多くある。なので、リテラシーを確かめるサンプルとしては使えるかもしれない。
今も版を重ねているようだが、改版されていないので文字が小さい。

似たような型の本としては、『日本語の表情』を筆者はおすすめする。

[関連]
『日本語 表と裏』森本哲郎(1985・新潮社)単行本
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