『教育の分配論―公正な能力開発とは何か』宮寺晃夫(勁草書房)
2006年
254頁
目次(収録作品)
はじめに 分配・教育・国家
序章 分配論と「教育の視点」
1 分配論と教育の関わり
2 教育の視点
3 平等理論の分配論
4 経済・倫理・教育
5 善・正と卓越主義
I部 格差と公正
第一章 環境が人をつくる、か?──学力格差をめぐる「公正」
1 教育と環境
2 「格差問題」
3 環境決定論
4 格差と偏差
5 ローマー・ケース
6 努力と実績
7 モラル・ラック
第二章 階層と個人の選択意思
1 「格差問題」から「排除問題」へ
2 個人の選択意思の形成
3 選択の道徳的問題性
補論一 選択による教育財の分配、その問題性
II部 分配論の諸相と能力開発──ロールズ・サンデル・ノージック
第三章 平等理論と多様な能力
1 平等理論と不平等の根源
2 ロールズの「格差原理」と教育の分配
3 格差原理と「自然による分配」
第四章 共同体理論と共同資産としての能力
1 能力と能力差
2 能力の所有とその帰属
3 徳と共同体の再建
4 危機にあるコミュニティ
第五章 権原理論と自然資産としての能力
1 教育の権原論
2 自己努力と選択意思
3 教育資源の分配原理
4 能力論と教育論
III部 国家と教育分配の主体
第六章 「規制緩和」後の国家/市場と教育──分配の主体は誰か
1 問題の所在
2 市場原理とネオリベラリズム批判
3 教育分配論の不可避性
4 国家/市場と共同体
補論二 国家と教育──アリストテレス『政治学』を読む
第七章 リベラリズムと変貌する国家──公共性・他者性・多元性
1 ローティと国家
2 アメリカニズム・リベラリズム・プラグマティズム
3 リベラリズムの論点一──公共性
4 リベラリズムの論点二──他者性
5 リベラリズムの論点三──多元性
補論三 共通理性と教育
終章 優先論と「教育倫理学」
1 優先論
2 緊急性という基準
3 稀少財と「社会的限界」
あとがき 平等主義の鍛え直し
教育の分配は、もはや「教育機会の平等」分配だけでは、公正性を保障できない。関連する諸理論を縦横に考察し、人それぞれの環境条件の個別性を配慮した上で、能力格差を生み出す根源に迫る。国家の枠組みがグローバル化する中、国家がなお教育の分配主体として機能しうるかどうかを原理的に考察。分配の本質に関わる問題に切り込む。
出典:勁草書房公式サイト