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『アイザイア・バーリン』マイケル・イグナティエフ(みすず書房)

『アイザイア・バーリン』マイケル・イグナティエフ、石塚雅彦・藤田雄二訳(みすず書房)

2004年
387頁
定価:6,600円(税込)




目次(収録作品)

第一章 オールバニー
第二章 リガ——1909-15年
第三章 ペトログラード——1916-20年
第四章 ロンドン——1921-28年
第五章 オックスフォード——1928-32年
第六章 オール・ソウルズ
第七章 同信の友——1934-40年
第八章 アイザイアの戦争——ニューヨーク、1940-41年
第九章 アイザイアの戦争——ワシントン、1942-45年
第十章 モスクワ——1945年
第十一章 レニングラード——1945年
第十二章 部族——1946-48年
第十三章 冷戦——1949-53年
第十四章 遅い目覚め
第十五章 名声——1957-63年
第十六章 追いつめられた自由主義者——1963-71年
第十七章 ウルフソン——1966-75年
第十八章 回顧——1975-97年
第十九章 終章

20世紀を代表する自由主義哲学・思想史家の評伝、と聞くだけでは、これほど刺激に満ちた物語を予期できないだろう。バーリンは常に世界を動かす渦のただなかにいた。読者はその足跡をたどりながら、数々の20世紀の要人たちと出会い、バーリンとともに歴史的な場面を疑似体験することになるのである。

著者イグナティエフは学者としてもジャーナリストとしても評価の高い異才であり、本書においてもその両方向のセンスを遺憾なく発揮している。等身大のバーリンを鋭く捉える著者の視線は、鋭敏で口達者なマルチ・プレイヤーの中に、感動的なまでに率直な魂を見通している。自分にとって何が真実か、それを見定めるときのバーリンには一片の欺瞞もない。この率直さと、ものごとの核心をわしづかみにする洞察力をあわせ持った魂が、多元的なアイデンティティを飼いならした人生経験と幅広い見識を足場にして、独自の視界を開いたのだと気づかされる。

価値観の多様化と対立の時代に、バーリンの自由論やその背景にある多元主義以上に示唆的な哲学を挙げるのは難しい。本書の後半はバーリンの遍歴に沿って、彼の哲学が形成された文脈を浮かび上がらせている。初学者にとっても本書は格好の導火線となるだろう。

常に冷静かつ懐疑的な姿勢で、激動の時代にリベラルの本領を体現したバーリンについて、著者いわく、「将来バーリンについての左翼、右翼双方からの中傷がどちらも意味をなさなくなってからも、彼の残したエッセイは永く読み続けられるだろう」

出典:みすず書房公式サイト

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