2010年3月1日初版発行
183頁
有り体にいえば雑談である。しかし並の雑談ではない。文系的頭脳の歴史的天才と理系的頭脳の歴史的天才による雑談である。学問、芸術、酒、現代数学、アインシュタイン、俳句、素読、本居宣長、ドストエフスキー、ゴッホ、非ユークリッド幾何学、三角関数、プラトン、理性……主題は激しく転回する。そして、その全ての言葉は示唆と普遍性に富む。日本史上最も知的な雑談といえるだろう。
本書裏表紙(カバー)より
カバーの説明通り、数学者の岡潔と評論家の小林秀雄の雑談。
なかなかよい。知識人・教養人の雑談に興味のあるひとにおすすめ。
ただ、(ジャンルが違うが)岡潔の最初の一書としては『春宵十話』をおすすめする。
ところで、この対談、省略されている部分があるように感じたのが気になった。話のつながりが不自然なところが散見される。もし筆者の推測が正しいなら、「完全版」の刊行を望む。
[筆者注]
(p.169)本書「注解」
「神風 第二次世界大戦末期に、日本の海軍航空隊が編成した特別部隊「神風特別攻撃隊」のこと。片道分の燃料を積み、敵艦隊に体当り攻撃を敢行した。」
いわゆる「片道燃料」だが、筆者が知る限り当事者で特攻機でそのようなことがあったという証言は見たことがない。一方、燃料は満タンだったという証言はいくつもある。歴史的事実のように記しているが、きちんとした証拠があるのだろうか。