『天皇退位 何が論じられたのか―おことばから大嘗祭まで』御厨貴編著(中公選書)
2020年
406頁
目次(収録作品)
象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば これからの象徴天皇制を考える 原武史, 君塚直隆, 河西秀哉 ほか
平成の天皇をどう位置づけるか 御厨貴
古来、天皇は一貫して「象徴」であった 山崎正和
漱石が仰ぐ「立憲君主制」の天皇 平川祐弘
女性、女系除外の必要ない 伊藤之雄
象徴としての天皇と日本国憲法 石川健治, 姜尚中
象徴天皇制はどこにいくのか 君塚直隆
天皇と象徴を考える お気持ち表明を受けて 長谷部恭男, 杉田敦, 岩井克己
象徴天皇制とは何か 御厨貴
いまこそ「国体護持」を叫ぶとき 片山杜秀
分断化された社会はどこに向かうのか〈抜粋〉 宮台真司, 苅部直, 渡辺靖
これからの天皇と日本21世紀的見地の必要 ケネス・ルオフ
お言葉を機に国の在り方問おう 近藤誠一
「お言葉」から考える 三谷太一郎
憲法からみた天皇の「公務」そして「生前退位」 横田耕一
摂政がやはり最善 渡部昇一
「象徴とは」国民的議論を 渡辺治
天皇制と民主主義の矛盾 佐伯啓思
「特例が先例」矛盾しない 宮崎緑
退位以外の対応余地を 八木秀次
天皇と憲法 三谷太一郎
生前退位 北田暁大, 原武史
天皇と政治 御厨貴
天皇「生前退位」の真意は何なのか 田原総一朗, 鈴木邦男
「憲法改正政局」という未体験ゾーン 清水真人
「お気持ち」切り離し議論を 西村裕一
能動的象徴、利用される危険 河西秀哉
天皇のご意思は満たされたか 保阪正康
皇位継承国会が議論を 大石眞
「平成流」継承、強い意識 原武史
21世紀の新しい皇室〈抜粋〉 東浩紀, 津田大介
平成は終わるうやうやしく 金井美恵子
「一律」は民主主義と矛盾 小林節
「生前退位」皇室のありかたを問い直す 原武史, 保阪正康
皇室 御厨貴
将来見据え皇室のあり方議論を 井上寿一
二重権威ありえない 河西秀哉
象徴のあり方次世代に託す 渡邉允
雅子さまは悩める女性たちの象徴です 三浦瑠麗
公務縮小し、臨時代行も活用を 八木秀次
象徴天皇制の”次の代” 原武史
『ザ・議論!』第1部「天皇制」〈抜粋〉 井上達夫, 小林よしのり
「令和」以後 御厨貴
なぜ天皇の生前退位がそれほど大問題なのか〈抜粋〉 宮台真司, 神保哲生
奥平康弘『「萬世一系」の研究』〈上〉解説 長谷部恭男
皇室典範改正の出発点に 苅部直
皇室制度の疲労顕在化 笠原英彦
制度整備議論急がず 石原信雄
今上陛下のご意思表明を受けて〈抜粋〉 三浦瑠麗
21世紀家父長制の悪夢と新天皇家の発する家族メッセージ 牟田和恵
皇室は世界の安寧のために 君塚直隆
2016年7月のNHK「天皇退位スクープ」、翌月の「天皇ビデオメッセージ」から3年余。すでに新天皇が即位し、元号も「令和」となった。当初、そもそも憲法に定められていない「退位」は可能なのか、天皇の「意志」によって制度が変えられることがあってよいのか、と政府・識者が困惑したにもかかわらず、国民世論の支持により、一代限りの退位を可能とする特例法が成立した過程については記憶に新しい。しかし、たとえば「象徴」とは何なのか、天皇の「公務」とは何か、などについて、新たなコンセンサスが生まれたわけではなく、女性天皇を容認するか否かについても、棚上げになったままである。
本書は、この3年間に、誰が、どんなことを言ってきたのか、その論点を整理し、積み残した課題を提示するものである。今回の有識者会議(天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議)の座長代理を務めた編者が、3年分の雑誌論文、インタビュー、新聞記事などから、自身の主張とは相容れないものも含めて選んだものを論点ごとにまとめ、それぞれについてコメントを付す。そこには、イデオロギーなき時代の混沌とした思想状況も浮かび上がる。出典:中央公論新社公式サイト